4月16日、1回戦のV候補・浦安ニューラッキーズに勝利したベイマリ1B。
翌17日、彼らは自信に身を纏い、堂々とした表情で高洲球場のグラウンドに現れた。
この試合、みんな知っていた。
これまで一緒に戦っていたT君が負けたら最後の公式戦であることを。
だったら勝つしかない。
単純にして明快。
T君と1分、1秒でも一緒にやるには、勝利こそが唯一のアンサー。
気合い十分の中始まった2回戦。
不運なイレギュラーもあって、初回に先制されたものの、1番、2番の連打から流れを掴み一気に逆転。
序盤のベイマリは、1回戦の再来を思わせる上々の立ち上がりだった。
ところがエラーから3回に逆転されると、連投の疲れがみえたか制球を乱し、先発、2番手と4回、5回に、まさかの計8失点。5回表が終わった時点で11対3と一方的な展開に。
「あきらめたら、そこで試合終了ですよ」
時間から言って最終回であろう5回裏、先頭バッターが四球で出塁するも盗塁死でワンナウト。
もはやこれまで、誰もが思っても不思議じゃなかった。
しかし彼らは、決して諦めていなかった。
7番のラッキーボーイが相手エラーで2塁へ。そして8番が左中間にヒットで続き、そしてT君に打席が回った。
スタンドからは1A、3部の仲間が必死に声を張り上げ、T君の“最後”の打席を見守っていた。
「フーーッ」
バッターボックスで大きな息を吐くT君。
「…打たせて下さい」
そして…。
カキーーーーーーン!!!
たくさんの思いをのせて白球がライト線に飛んだ。
「フェアフェア!」
T君の執念は見事、タイムリーヒットとなって反撃の狼煙を上げた。
「よっしゃ!」
1塁ベース上で何度もガッツポーズをするT君。
1分、1秒でも一緒に野球をやろう——————。
思い出したかのように、そこから怒濤の攻撃が始まった。
そして2番が本日、猛打賞となる3本目のヒットをレフトに運び、ついには8対11と3点差に迫った。
最後はあと一歩及ばず、2回戦で姿を消すことになった。
しかし当初は無謀とさえ言われた1部のトーナメントに挑み、そしてV候補に勝ち、2回戦も素晴らしい戦いを見せてくれた彼らに拍手を贈りたい。
T君と一緒にやる最後の公式戦。
悔しくて、悲しくて土埃まみれの涙で顔は汚かったけど、今日の試合はきっと一生の宝物になるに違いない。
試合後、前日の風で桜の花が散っていた高洲公園、もう新緑の葉が顔を出していた。
明日からお互い、新しいスタート。
また、いつか、きっと…。