気が遠くなるほどの熱波がグラウンドを覆っています。よみうり旗初戦と準決勝は、2試合とも一死満塁から始まる特別延長(通称サドン)の死闘となりました。
初戦、エースが魅せました。
ときに気合いの雄たけびを上げて投げ込むストレートは一球一球に魂が宿っているかのよう。穏やかで優しい男の子が、この日のマウンドでは勝負を懸ける凜々しい男の形相です。もう迷わない。あのミットに渾身をねじ込む。
熱い鼓動はナインに伝播しました。
絶対に勝ちたい。どうしても勝ちたい。みんなで必死に2点をもぎ取り、みんなで必死に守りました。
延長戦での一撃は、ナンバー7。鮮やかに伸びる白球はスタジアムにこもる熱を切り裂き彼方へ。その裏、いつも笑顔の2番手ピッチャーはにこりともせず、狩りをする狼の表情でゲームを支配しました。
翌日。
キャプテンのバットがいきなり火を吹きました。エースは風格さえ漂わせて流れをグリップします。少年たちが、ひとかたまりの生き物になってゆきます。マウンドもバッターボックスもボールをつかむのも、一人。でもそのとき胸にあるのは、仲間を次の塁へ。白球をもぎ取り仲間の元へ。
延長戦はまたもナンバー7でした。
一閃したバットの裏側には一体どれだけの素振りがあるのでしょう。毎朝毎晩、一振り一振りに気迫を込めて。走者を一掃し、サードベースでガッツポーズが華開きます。
疲れと緊張が忍び寄る最後の守備。
マウンドに仁王立ちしたキャプテンが、ファイア・ボールで仲間を鼓舞します。ナインたちの背中を支えるのはナインたち自身と、スタンドからうねりのように届くベイマリ・ファミリーの大声援。
力を振り絞るたび、少年たちの汗が光り輝きます。
「水の流れに打たれながら魚たちのぼってゆく。光っているのは傷ついて、はがれかけたうろこが揺れるから。小魚たちの群れきらきらと、あきらめと限界という名の鎖を身をよじってほどいてゆく」(一部改)。中島みゆきさんの名曲「ファイト!」を思い出しました。
死闘の果てに。君たちが勝ち取ったのはきっと、自立の息吹きと無限の可能性です。
ナンバー7の呼び名は、ほぼそのまんまの「ミスター・サドン」に決まりました。修羅場をくぐりましたが、素直で可愛い小学生たちです。
さあ次は決勝戦。
お父さんとお母さんは壮絶な試合を連続で見せられて真っ白な灰に燃え尽きた感もありますが、子どもたちはみんなやる気満々です!
「小学生最後の夏。なぜ”熱い”夏にしなければいけないのか…?いずれその答えが分かるだろうその時まで、この夏を全力で駆け抜けよう。主役は君たち、演出するのも君たち自身です!!」(監督の言葉より)