日ハム旗の旅が終わった昨年秋、監督は次のテーマとして選手に「自主性」を求めました。
自ら考え、自ら行動せよ。
それは高い目標でした。
時に暗闇の中で前へ進んでいるのかも分からない、険しい道のりが続きました。
勝利と敗戦が交互し、つかんだと思った光りは瞬いて消え、3連敗も経験しました。
苦しかった。
でも少年たちは、歩みを止めませんでした。
おのれの特技を探し、仲間と連なる策を学び、気持ちを強く、一つに。
臨んだ今大会、初戦と準決勝では特別延長の死闘を勝ち抜きました。
たどり着いた決勝の朝、集まった表情に驚かされました。
浮つきも気負いもなく、大きな舞台へ向かう喜びに満ちたクールな笑顔。
胸の内では、闘志が青く静かに燃えています。
試合は、先手を取っては追い付かれる灼熱の展開。
序盤、打線はむしり取るように1点を積み重ねました。
「流れは一度落ち着くぞ。耐え抜いて、爆発しよう」。
監督の円陣にうなずく26の瞳には、強い力が宿っています。
エースは折れることを知らず、野手は身を投げ出して守り、ベンチの声は途切れません。
5回表。チャンスが来ました。
監督が組んでいた腕を解き放ち、稲妻のようにタクトを振るいます。
少年たちの決意とサインが一つになり、続々と進塁するランナー、そして連打。
青い炎は紅蓮となってガッツポーズを連ねました。
苦しい終盤にもクローザーはあくまで冷静、守備は網となってカバーを重ねました。
勝利の瞬間、初戦と準決勝のような全身の咆吼はありません。
並んでいたのは、さわやかな表情。朝と同じ静かな笑顔。
自らの意志で突き抜けた者たちは、ここまで成長するのでしょうか。
この大会で掲げたフレーズは「楽しんで勝つ」でした。
監督はいつも話していました。
「厳しく指導することは簡単だが、君たちは自分の力で道を切り開いてほしい。難しいテーマなのは分かっているけど、みんなで同じところを見て、今を超えてほしい。それが成長なんだよ」
昨年秋から、監督に叱られた記憶はないはずです。
技術指導をしてくださるTコーチは「学童野球では極めて高いレベルを設定し、チーム一丸で目指す姿が素晴らしい」と言っていました。
己の力で頂きへ登り、力を束ねて結果を出した君たちは凄い。
優勝おめでとう。自信を持って前へ進め。
最後に。
支えてくれた人たちへの感謝を忘れないでください。
監督、コーチ、総監督。
ベイマリファミリーは毎試合、スタンドで声を枯らしていました。
早朝からグランドを設営してくださった連盟の皆様、暑さの中でジャッジを続けてくださった審判の方々。
仲間たちと、ライバルたちがいなければ野球はできません。
そして何より、いつの日も君を思うお母さんとお父さんに。
「泥だらけのユニフォームを洗うたび、他のお母さんも今ごろ洗っているのかなと想像すると、ああ一緒だねと思えて…」
勝利後のミーティングで、Y君のお母さんは泣きました。
ブログの最後に毎回綴っている監督の言葉は、その試合のある週の前半に頂いています。
読み返してみてください。珠玉の導きのようです。
当週はこんな言葉でした。
「こんがり日焼けしてきた選手たちは一段とカッコいい。『さあ駆け抜けろ。君たちなら、できる』」